音楽

ナラ・シネフロ『Space 1.8』新世代UKジャズ×老舗テクノレーベルWarpのデビュー作!

ディアスポラを背景に、2010年頃から盛り上がっている新世代UKジャズ。
新鋭ナラ・シネフロ(Nala Sinephro)のデビューアルバム『Space 1.8』は<Warp Records>からリリースされ、ジャズ電子音楽の融合による新境地が提示されています。

ナラ・シネフロの経歴


ナラ・シネフロ(Nala Sinephro)はイギリス(UK)のロンドンを拠点に活動する、カリブ系ベルギー人の作曲家&プロデューサー&音楽家です。

ベルギーとカリブ海マルティニークで育ち、フォークソングを耳コピしてバイオリンを弾くようになりました。

16歳でジャズの勉強をしていたときにペダルハープを始め、UKジャズの最先端集団スチーム・ダウンSteam Down)で演奏するようになります。

生楽器のジャズと電子音楽の融合による瞑想的なサウンドに注目が集まっています。

アルバム『Space 1.8』の概要


デビューアルバム『Space 1.8』は2021年9月3日、UKの老舗テクノレーベル<Warp Records>(ワープ・レコーズ)からアナログ盤LPでフィジカルリリース、デジタルでも配信リリースされ、CDは2022年1月14日リリースです。

制作・レコーディングが行われたのは2018年から2019年にかけて、シネフロが22歳のときでした。

シネフロはモジュラーシンセシンセペダルハープを演奏し、女性サックス奏者ヌバイア・ガルシアNubya Garcia)など、UKジャズ最先端の演奏者10人が集結しています

周波数周波数特性)と幾何学」に対するシネフロの関心から生み出された、形而上学的な8つのスペース(Space)によって、錬金術的な「音の力」を堪能することができるでしょう。

【1】Space 1

「Space 1」はシネフロが1人でモジュラーシンセ、シンセ、ハープという3つの楽器を演奏し、レコーディングとミックスまで行っている、4分あまりの楽曲です。

リラックスした瞑想状態へと導かれる神秘的な音色に癒されます。

【2】Space 2

6人編成、6つの楽器による5分弱の「Space 2」。

UKジャズ・クインテットエズラ・コレクティヴEzra Collectiveのサックス奏者ジェイムス・モリソン、UKジャズ・セクステットマイシャMaishaからリーダーのドラマー、ジェイク・ロングと女性ギタリストのシャーリー・ テテを迎えています。

作曲家&ジャズピアニストのライル・バートンによるピアノの旋律、ベーシスト&プロデューサーのルディ・クレスウィックによる低音のダブルベースも印象的。

シネフロのドローン的なシンセで精神的な高みへと誘われます

【3】Space 3

3人編成、4つの楽器による1分15秒ほどのリード曲「Space 3」は、3時間におよぶ即興セッションからの抜粋です。

スチーム・ダウンからコアメンバーの2人であるドラマーのエディ・ヒック、アフロ・クインテットのオニパOnipa)のプロデューサー&マルチ奏者ウォンキー・ロジックWonky Logic)ことドウェイン・キルヴィングトンを迎えています。

エディ・ヒックは、アメリカ・LAジャズのサックス奏者カマシ・ワシントンKamasi Washington)と人気を二分する、UKジャズのサックス奏者シャバカ・ハッチングスShabaka Hutchings)率いる変則カルテットサンズ・オブ・ケメットSons of Kemetのドラマーとしても活躍。

電子音楽と生楽器の融合が秀逸です。

【4】Space 4

  • ナラ・シネフロ:作曲、シンセ、レコーディング、ミックス
  • ヌバイア・ガルシア:サックス
  • ライル・バートン:キーボード
  • ジェイク・ロング:ドラム
  • トゥーム・ディランTwm Dylan):ダブルベース
  • Ben Bell:レコーディング
  • Rick David:ミックス、マスタリング

5人編成、5つの楽器による6分20秒ほどの「Space 4」。

マイシャから、フロントを務めるサックス奏者&作曲家のヌバイア・ガルシア(アメリカ・カリフォルニアのジャズレーベル<Concord Jazz / コンコード・ジャズ>所属)、ドラマーのジェイク・ロング、ベーシストのトゥーム・ディランを迎えています。

女性版カマシ・ワシントンと評判になっているヌバイア・ガルシアのサックスを中心としたアンサンブルがムーディーです。

ヌバイア・ガルシアとシャーリー・テテは、アフロジャズ・セプテット(女性6人+男性1人)のネリヤNérija)のメンバーとしても活動しています。

【5】Space 5

  • ナラ・シネフロ:プロデュース、演奏(モジュラーシンセ、シンセ、ハープ)、レコーディング、ミックス
  • アナンセAhnansé):サックス
  • シャーリー・テテ:ギター
  • Rick David:レコーディング、マスタリング

3人編成、5つの楽器による4分ほどの「Space 5」。

呼吸音や胎内音のようなミニマルなサウンドと、ハープとサックスとギターによる展開の組み合わせが刺激的です。

スチーム・ダウンの創始者アナンセは、アフロジャズ・カルテットユナイテッド・ヴァイブレーションUnited Vibrationsではウェイン・フランシス(Wayne Francis)名義で活動しています。

【6】Space 6

  • ナラ・シネフロ:作曲、プロデュース、シンセ、レコーディング、ミックス
  • ジェイムス・モリソン:サックス
  • ジェイク・ロング:ドラム
  • Rick David:レコーディング、ミックス、マスタリング

3人編成、3つの楽器による4分半ほどの「Space 6」。
全編ドローン的なシンセと、緊張感あふれる生楽器サックス&ドラムの組み合わせがスリリングです。

【7】Space 7

  • ナラ・シネフロ:プロデュース、演奏(モジュラーシンセ、シンセ、ハープ)、レコーディング、ミックス
  • Rick David:マスタリング

シネフロが1人で3つの楽器を演奏している、1分40秒ほどの「Space 7」。
穏やかなミニマルナンバーです。

【8】Space 8

  • ナラ・シネフロ:プロデュース、演奏(モジュラーシンセ、シンセ、ハープ)、レコーディング、ミックス、マスタリング
  • アナンセ:サックス
  • Rick David:レコーディング

2人編成、4つの楽器による、17分半ほどの「Space 8」。

生楽器ハープからサックスへの流れ、アンビエント・ドローン的かつ立体的な奥行きのあるミニマルなシンセに心が浄化されます
ラストの笑い声も素敵!

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渡辺和歌
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